パワハラ防止法の施行
港区麻布十番所在の鈴木基宏法律事務所、弁護士の鈴木です。
テレビでも取り上げられていたのでご存知の方も多いですが、「パワハラ防止法」(正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)が本年の6月1日に施行されました。
このパワハラ防止法には厚生労働省の詳細な指針(令和2年厚労省告示第5号)が出ており、他のサイト等でも細かく解説されていますので詳細は割愛しますが、ひとことでいうと、大企業はパワーハラスメントを防止するための必要な措置を講じる義務を負うとするものです。具体的にどのような措置が必要なのかは、厚労省の指針を参照されると良いと思います。
このパワハラ防止法は、今回の施行では大企業のみ措置を講じる法的な義務を負うとされ、中小企業については措置を講じる「努力義務」を負うにとどめています。
中小企業は2022年3月31日まで法的義務ではなく、努力義務とされ、同年4月1日以降は大企業と同様に法的義務となるというわけです。
ここでいう中小企業とは
「(国、地方公共団体及び行政執行法人以外の事業主であって、その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下であるもの及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下であるものをいう」
とされています。
要するに
①資本金額(又は出資総額)が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)を超えているか
②常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)を超えている
上記①か②のいずれかに該当すると「大企業」になるので、法的義務を負い、いずれにも該当しなければ「中小企業」になるので法的義務ではなくひとまず安心・・・
ただ、法的義務ではないといっても、パワハラ行為があった場合に、中小企業が一切責任を負わないというわけではありません。
職場内外のパワハラにより労働者に身体的・精神的損害が生じた場合には、加害者だけでなく、労働者を雇用している企業にも職場内の安全配慮義務違反など使用者としての責任を問われる場合もありますし、パワハラを防止することで職場環境が改善されて生産効率がアップするということもありますので、中小企業であっても、パワハラの発生を防止する措置を講じる必要性は高いといえるでしょう。