合意による時効の完成猶予
港区麻布十番所在の鈴木基宏法律事務所、弁護士の鈴木です。
2020年4月1日に施行された改正民法で、「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」(民法第151条)という制度が設けられました。
「民法第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
1.権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
① その合意があった時から1年を経過した時
② その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
③ 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時」
つまり、当事者間で、協議を行う旨の合意が書面でされれば、上記の期間中は消滅時効は完成しないということです。
債務の存在について当事者間に異論はないが、それぞれが認識している債権額に齟齬があるような場合、直ちに提訴(裁判上の請求)せずとも、これにより時効の完成を阻止できることになります。
ただ、内容証明郵便などで債権者が債務者に支払いを請求したような場合(民法上はこれを「催告」といいます。)、民法第150条により6ヶ月間時効の完成が猶予されます。
この催告による猶予期間中に、協議を行う旨の書面による合意が成立したとしても、民法第151条に基づく猶予は効力がないとされていることに注意が必要です(民法第151条第3項)。
合意による時効の完成猶予期間中の催告も、同様に催告による猶予は効力がありません。
債権者としては、提訴する前段階として時効完成猶予の効果を得るためには、催告するか、協議を行う旨の書面による合意をするか、いずれかということになります。