契約書の条項(表明保証条項)
港区麻布十番所在の鈴木基宏法律事務所、弁護士の鈴木です。
契約書の条項に
「○○が真実かつ正確であることを表明し、保証する」
「表明し保証した事項が、真実又は正確でなかったことが判明した場合、これによって相手方が被る損害を補償する責任を負う」
といういわゆる表明保証条項が記載されることがよくあります。
特に不動産売買契約や株式譲渡契約といった、ある程度金額の大きな取引に係る契約書に記載されることが多いです。
この条項はどういう効果をもたらすのでしょうか。
表明保証条項のもたらす効果
○○の部分には事実に関する記載が入ります。
例えば、不動産の売買契約において売主が
「本件売買契約に際して作成された物件概要書の記述は、全て真実かつ正確であり、虚偽の記載を含んでおらず、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な事実の記載を欠いていない。」
という事実を表明保証した場合、その物件概要書に真実でないことが記載されていれば、これによって買主が被った損害を売主は賠償しなければならなくなります。
実際の裁判例
東京地方裁判所平成21年12月11日判決
(概要)
被告は、不動産(「本件不動産」)を信託銀行に信託し、信託受益権の形式で保有していたが、同信託受益権を特定目的会社(原告)に譲渡した。
この譲渡にあたり締結された売買契約において、被告は、
「本件売買契約に際して作成された物件概要書(以下「本件物件概要書」という。)の記述は、全て真実かつ正確であり、虚偽の記載を含んでおらず、記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な事実の記載を欠いていない」
との事実を表明保証し、その表明保証に関して誤り又は不正確な事項があるときにこれが是正されない場合、被告はそれにより原告に生じた損害、損失又は費用を賠償することを約した。
しかし、同物件概要書においては、対象建物は賃貸借契約書記載の使用目的(住所又は住居兼事務所)のとおり使用されていると記載されているが、実際にはその一部が事務所として使用されていた(使用目的違反があった)。
裁判所は、上記について被告の表明保証違反を認め、建物に使用目的違反があったことにより原告が被った損害の賠償を命じた。
売買契約書の文案の表明保証条項の記載を一つ一つ丁寧に検証し、事実と合致しない記載は文案の段階で除外しておかないと、後々表明保証違反として、これにより相手方が被った損害を賠償しなければならなくなる可能性があります。
契約書を見る上での要注意事項の一つといえます。
鈴木基宏法律事務所(港区麻布十番所在)では、契約書の作成・チェックだけでなく、契約書の読み方のアドバイス(紛争時の契約文言の解釈と契約文言に基づき裁判となった場合の見通し等)を行っております。
詳細は、「業務内容-契約書」の箇所をご参照下さい。